こんにちは、Wells Insurance Hong Kongです。

IMDが発表しているランキングは他にも…

最新のランキングが発表されるたびに当コラムでもご紹介している「世界競争力ランキング」。作成者はスイスに拠点を置くビジネススクール・国際経営開発研究所(IMD)で、70に近い世界の国から統計データを取り寄せ、「経済パフォーマンス」「政府の効率性」「ビジネスの効率性」「インフラ」の4つの因子に整理し、競争力の順位を決めているのですが、同機関が発表しているランキングには他のものもあって、今回はその中から最新版が発表された「世界人材ランキング(World Talent Ranking)」をご紹介します。

審査されるのは「人材」

このランキングで審査されるのは当然「人材」。各国の人材競争力を以下3つのカテゴリーに分けて分析し、長期的な価値創造を確保するために必要な、国内および海外の高度なスキルを持つ人材を各国がどのように育成し、誘致し、維持しているかを審査しています。

1.【投資・開発】自国で育った人材への投資と開発の状況
 教育に対する公的投資の規模や生徒と教師の比率などを網羅する。

2.【魅力】国が国内外の優秀な人材をどれだけ惹きつけるか
 生活費や生活の質などの要因によって異なります。

3.【準備態勢】人材プールに存在するスキルと能力の程度
 労働力の増加、上級管理職の経験および能力のレベルを含みます。

香港は過去最高の4位

それでは早速ランキングを見てみましょう。

2025年版で首位に立ったのはスイス。変動の大きいランキングにあって、スイスは10年連続で1位の座を維持していて、人材競争力において引き続きリーダーシップを発揮していることが分かります。そんなスイスに次いで2位となったのはルクセンブルク。同国は2023年に過去最高の2位となり、昨年は順位を一つ下げて3位に後退したものの、今年は7位に後退したシンガポールから2位の座を取り戻しました。次いで3位となったアイスランドは前回6位からランクアップ。そして4位につけたのが香港特別行政区で、5つ順位上昇は今回のランキングの中でも最大級。過去10年間でトップ10入りは3度目となりました。

香港について各カテゴリーを見てみると、「準備態勢」では4位から3位、「投資と開発」では13位から12位、そして最大の牽引役となったのが「魅力」で、28位から20位へとジャンプアップしています。指標レベルでは、香港の強みは2024年とほぼ変わらず、理系卒業生の割合(1位、42.39%)、女性の労働力参加率(5位、50.79%)、金融スキルの普及率(3位)、経営教育の有効性(5位)などが挙げられ、PISA調査の結果(6位)も、これらの強みをさらに強調しています。香港は、外国人の高技能人材にとっての魅力も高まっており(26位から13位に上昇)、経営幹部は熟練労働者の確保が容易になったと報告しています(26位から16位に上昇)。

香港が低評価とされたのは…

一方で香港が低評価とされた項目では、粒子状汚染への高い曝露(37位)、労働力人口の伸び悩み(62位、-0.39)、教育への公的支出の低さ(49位、3.9%)などが挙げられていて、香港は生活費指数で最低の順位(66位)となりました。また、生徒対教師比率(ともに19位、それぞれ12.1と10.7)で測られる初等教育と中等教育の質についても、さらなる改善の余地があると指摘されています。

日本は〇〇位

さて、ランキングに戻ります。オランダは5位で安定し、スウェーデンはわずかに順位を下げて6位。また、アラブ首長国連邦は2020年から着実に順位を上げ、2025年に初めてトップ10入りを果たし、9位となりました。デンマークは8位に後退し、オーストリアは前年の順位を維持し、トップ10入りを果たしています。

ここまでが今回のトップ10で、アラブ首長国連邦を除けば常連が並ぶといった感じですが、気になる日本はというと…、昨年から3つ順位を上げ、40位。アジアの先進国として韓国(37位)や中国(38位)の後塵を拝していることも悲しいのですが、世界第3~4位の経済大国であるにもかかわらず、80ページ近くに渡る今回のレポートの中で、日本に対する記述が皆無であることが世界の中での日本の存在感が著しく低下していることを如実に示していて、これは深刻に受け止めざるを得ないでしょう。

外部からの優秀な人材の誘致に積極的な香港

再び香港に話を戻すと、政府は、将来の発展を支えるために、人材プールの多様性と誘致策の有効性をさらに高めながら、地元の人材の育成を引き続き強化する決意を表明し、引き続き外部からの優秀な人材とその家族の継続的な入国を歓迎していると強調しました。昨年、行政長官の施策方針演説で重点を置いた分野の一つが、優秀な人材の誘致と確保であり、今回のランクアップは人材誘致政策が功を奏し、トップタレントパス制度の拡充や高収入人材への長期ビザ付与などの施策が評価されたものと受け止められています。このような人材流入は、地元の労働力を強化して人口構造を改善し、人力不足を補って香港の経済成長に継続的な推進力を注入する上で極めて重要であると考えられていて、地域の更なる発展が期待できるでしょう。

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